20240419
WORLD WITHOUT WORKを読んだ。テクノロジー失業について論じた本で今後起こり得る事態についてその対策を示している。大きくは以下の2つの問題になるかなと思った。
1つは富の分配の問題で、AIによって仕事が代替されれば多くの人間は失業して賃金が得られなくなる一方、その生産手段を所有する資本家に富が集中し格差が拡大する。これは労働を前提とした今の社会福祉を拡充するだけでは対応しきれない。例えば所得税は労働者がいなくなれば成り立たないし生活保護も正当な理由なく就労しない者は認めないというスタンスである。そのために従来型資本に対する徴税の仕組みを構築しベーシックインカムを導入するというような新たな分配の方法を計画する必要があるという話になる。ただ筆者の提案するコミュニティの認識を通じて"活動"に価値を割り当てるCBIは人気投票で所得の分配を行うようなものでこれはディストピアだなという予感がした。まだ市場原理に任せた方がマシなのでは。
2つめには生きがいの問題で、仕事によって生きがいを得ている多くの人間はどうするのかという。ただ狩猟採集時代は意外と労働時間は短かったという事実からジェームズスーズマンによる「我々には労働によって定義されない充実した人生を送る能力が十分に備わっている」との指摘は希望だと感じた。筆者は政府が人々の生きがいに積極的に介入するべきと主張しているがむしろこれは生物としての人間の本来的な在り方に戻るわけで、労働は善であるというイデオロギーから解放されれば色々と策を講じるまでもなく人々はすんなり適応できるのではという気もした。