20241024
「世界は贈与でできている」を読んだ。
表紙のキーワードの羅列をみるに自分の興味に近そうなのと評判もよさそうだったので読んだが外れだった。
自分なりに内容を要約すると以下になる。
- 贈与は人に交換の論理では達成できない効用を与える
- 贈与は受け取ることなく開始できない
- 贈与を受け取るには与えられたそれに気づく必要がある
- 気づくには当たり前を疑うための教養が必要である
全体的に突っ込みどころが多くせっかくはじめに贈与の定義を置いた割に要所要所で恣意的とも思える要素が追加されていき、結局贈与とはこうであると言われてもまあそうなるように贈与を定めたのだからそうだなという気になってしまう。
特にこの本で根幹をなすはずの1章で説明される「贈与は受け取ることなく開始できない」という非自明な命題の根拠がペイフォワードを引きつつそれは疲労するからの一言にまとめられてしまっているのが気になる。ここが納得できなかったのでモヤりながら最後まで読んだ。
5章から7章にかけては自らの置かれた社会規範から外れてみないと当たり前のありがたみに気づけないという構造主義的な話で言語ゲームを引くまでもないとは思ったが、著者がウィトゲンシュタインが専門のようでその辺の事情によるものだろうか。
ラストの9章ではこの文脈での教養を得る手段としてサピエンス前史、銃・病原菌・鉄を読みましょうというのはやけに実践的な教えで親切だなと思った。