20241211

Posted on Dec 11, 2024

OpenAI Soraの発表の裏で話題になっていたGoogleの量子チップの発表の意義がよくわからなかったので量子コンピュータの基礎知識を得るために「驚異の量子コンピュータ」を読んで大体のところを理解した。

今回のGoogleの発表で強調されているのは以下の2点である。

  • The first is that Willow can reduce errors exponentially as we scale up using more qubits. This cracks a key challenge in quantum error correction that the field has pursued for almost 30 years.
  • Second, Willow performed a standard benchmark computation in under five minutes that would take one of today’s fastest supercomputers 10 septillion (that is, 1025) years — a number that vastly exceeds the age of the Universe.

1点目については誤り耐性量子コンピュータで閾値定理で示される閾値を達成したことで量子ビット数がスケールするようになったことだと理解した。本でも誤り訂正を搭載した大規模な量子コンピュータは少なくとも10~20年の基礎研究が必要と書かれているので結構なブレイクスルーなのでは?ただよくわからなかったのは数百量子ビットでは誤り耐性量子コンピュータには少なすぎるのでしばらくはNISQ時代が続くだろうという見立てに反して今回105ビットでそれが実現されているということでこれがどういう意味を持つのがが気になった。

2点目については10^25年の計算を5分未満でと聞くとキャッチーだが量子コンピュータと古典コンピュータはアーキテクチャが根本的に異なるために単純な比較はできない。GoogleのWillowの次の目標として従来のコンピュータを超える実用的な計算を実証するという言葉通り実用的な計算が行えるものではまだないようである。

あと仮想通貨について「難しい計算をすることそのものが価値を生む」という著者の認識は誤りである。マイニングに計算が必要なのはコストを負わせることによって耐攻撃性を高めるためで計算自体には本質的な価値はない。量子コンピュータの実現によってそのコストが下がるのであればシステムを維持するためにマイニングの難易度をあげる必要が生じるというだけである。よって健全な形でマイニングにおける期待から量子コンピューターの開発が進むとは考えにくいだろう。