20250131

Posted on Jan 31, 2025

「ブルシット・ジョブの謎」を読んだ。

昔から素朴な疑問として科学技術の発展により生産性は著しく向上しているにもかかわらず未だに多くの人々が週5労働を強いられているのはなぜなのかというのがある。
ケインズも20世紀末までに先進国では週15時間労働が達成されるとの予測を立てているのにも関わらずの現状を踏まえるとやはりこの疑問は妥当だろう。
特にこの頃AIの発展でWorld CoinなどUBIの話なども上がるようになってはいるものの生産性の向上が労働時間の削減に寄与していない歴史を鑑みると実現に疑問が生じるということになる。
このあたりの解像度を上げるうえでもブルシットジョブの概念は知っておくべきだろうなと思いつつも原書を読むのは億劫で積読のままだったので気軽に読めそうな新書のこれを読んだ。
とはいえ原書の意図を正確に伝えることを重視しているがために冗長というか読みづらい箇所や引用も多々あったのでその要諦を掴む目的としてはもっと適当な本があったかなとは思った。

明らかにBSJの存在は経済的合理性に欠くわけでこれは個人最適の結果として全体最適に至らないという構造的な話なのかなと思っていたがそうではなかった。
自分なりに本書からBSJの発生する仕組みを要約すると以下のようになる。

  1. 資本主義において新産業の開拓のネタが尽きると資本はFIRE部門に向かう
  2. FIRE部門が利潤を生み出す
  3. 生み出された利潤がBSJに投入される

そして

  • ネオリベラリズム
  • 旧約聖書にはじまる労働懲罰説
  • 労働はそれ自体に価値があるという観念

というイデオロギーがこの構造を固定化する。

2から3に向かう力学がわからなかったしこの論理で説明できないBSJも多くある気がして正直あまり納得感はない。この辺の詳細は原書を読んだ方がよいかも。

あとグレーバーからのBSJからの解放の処方箋としてのベーシックインカムの立ち位置が面白い。
なぜなら労働が効率化された結果としてベーシックインカムがあるという発想が自然で自分もなんとなくそう考えていたからだ。ベーシックインカムが労働を効率化するという逆説的な発想は刺激的。