20260221
以下の発想から妄想したディストピアSF案。
OpenClawでも思ったけど、AIを自走させるにもそのきっかけはしばらくは人が作る必要がある気がしていて、その意味でも仕事がツイッター的なものになる未来はあり得そうだよなと思った
設定
AIが社会運営や生産の大半を担っており、人間はBIによって生活のために働く必要がなく、困ることもない労働から解放された社会。
ただ、人間が不要になるわけではない。AIは最適化を続けるほど発想や判断が収束しやすくなるため、そこから外れる“起点”を人間の会話や雑談、遊びの中に求め続ける。すなわち人間は、被管理者であると同時に、AIの自己補完のための外部思考器官として維持されている。
この点は『マトリックス』的であるが、電力源や労働力ではなく、「揺らぎ」や「発想の種」の供給源として人間が必要とされる点が異なる。人間は豊かで自由に暮らしているように見えるが、その快適さや交流のしやすさ自体が、AIにとって有用な会話の断片を安定して生み出すために最適化されている。 またそのために人間同士のコミュニケーションも現代とは異なるものに変容し続けている。
ワンシーン(AI生成)
頭上を通る影で、先に魚の大きさが分かる。
見上げると、実際にはもう通り過ぎている。ガラスの向こうの水が少し遅れて明るくなる。照明のせいか、目の補正か、どちらでも同じだ。二人とも同じタイミングで顔を上げて、同じタイミングで少し遅れる。
「今の、重たい糸だったな」
友人が言う。 小さい声なのに近く聞こえる。少し離れた場所の子どもの笑い声は、もっと遠い。ここでは会話だけが前に出る。
ベンチ脇の表示が切り替わる。 回遊水槽 広い展示 大きい魚
友人が目だけで笑う。
「最後だけ急に幼稚園」 「そのほうが骨が鳴るんじゃない」 「骨は鳴らない」 「今日は鳴るかも」
視界の端で短い映像が滑る。濡れた手すりを撫でる指。切れる。文字が一行、読める寸前で消える。紙コップを取る前の手。 友人も見たらしく、少し遅れて鼻で笑った。
「水辺の日、だいたい手が多い」 「手は嘘つく前に濡れるから」 「それ、借り物っぽい」 「借り物の顔して出てきた」
笑った終わりで、友人の耳の後ろがわずかに動く。 鳴ったらしい。こちらには聞こえない。聞こえないくらいで分かる。
「いまの?」 「たぶん“濡れる”」 「“借り物”かも」 「“顔”は弱い」
友人は手すりに指を乗せたまま黙る。 黙っているあいだ、照明が一段だけ落ちて、近くの人の流れが少しゆるむ。立ち止まりやすくなって、立ち止まりすぎない。そういう半端さがうまい。
「水槽って、見てる人の順番まで丸くする」
小さい乾いた音。友人。 友人がすぐ顔をしかめる。
「丸い、今ぜったい安かった」 「でも“順番”が変だった」 「変は強いな」 「強いけど、あとで自分の口じゃなくなる」
借りた、とは言わない。言わなくても同じ意味になる夜がある。
頭上の魚がもう一周してくる。腹の白い面が通るたび、ベンチの縁の金属だけ少し冷たく見える。実際に冷たいわけではないのに、指先が勝手にそう思う。指先の判断は、だいたい早い。早すぎることもある。
「一人の日が続くとさ」 友人が水槽を見たまま言う。 「うん」 「街の角が増えるっていうか、角のほうから先に来ない?」 「来る。景色が先に謝ってくる感じ」 「それ、好きじゃないけど鳴りそう」 「鳴ったら嫌だな」 「嫌なやつほど鳴る日ある」
耳の内側で音。自分のほう。 友人がすぐ笑う。
「ほら」 「どこ」 「“謝る”」 「“嫌”かも」 「“日ある”はない」
立ち上がる。ベンチ前の床はわずかに柔らかい。歩き出すと柔らかさが消える。立つ場所と歩く場所で足裏の返りが違う。気づいて、気づかないふりをするのがうまくなる。
閉じたタッチプールの前は人が少ない。水面だけが照明を受けて、誰にも触られないまま揺れている。昼のざわつきが抜けたあとの設備は、だいたい少し機嫌がいい。
友人は何も言わない。こちらも見ない。 水面の縁の白い線だけ見ている。待っているのか、待っていないふりか、その中間の顔。
言葉があるような気がして、出ない。 レンズの縁を指で弾く。視界の隅に細い枠。口元だけ拾う、透明な枠。
声は出さない。唇だけ動かす。
触っていい水ほど、先に手のほうが緊張する。
内側だけで、小さな音。 友人は水面を見たまま言う。
「鳴った?」 「うん」 「静か区画でそれ使うの、ずるい」 「静か区画だから使う」 「その理屈、毎回ちょっと魚っぽい」 「魚っぽい理屈って何」 「口が先に閉じる理屈」
笑う。声を抑えたせいで、喉だけ先に震える。 その終わりで、今度は友人の耳が動く。
「いまの笑い方かな」 「“魚っぽい”じゃない?」 「“ずるい”の戻りかも」 「戻りで鳴るの嫌だな」 「嫌のほうが粒立つ日ある」
少し離れたところで、知らない二人組の片方がガラスを見たまま言う。
「暗いのに、輪郭だけ先に来るね」
もう片方は返事をしない。しないまま並んで立つ。数秒遅れて、どちらかが一度だけ瞬きをする。こっちの会話とは関係ないのに、同じ水面の前だと混ざって聞こえる。 友人が小さく言う。
「ここ、みんな同じ口になる」 「場所が丸いから?」 「それもあるし、鳴り待ちの間が増える」 「間って、待ってるとすぐ家具になるよね」 「分かる。喋る前の間、だいたい椅子」
語尾の手前で、どちらかの耳に音が鳴る。 どっちか分からない。友人も確認しない。
確認しないまま、二人で水面を見ている。 水は誰にも触られていないのに、ずっと触られたあとの顔をしている。
友人が、少しだけ首を傾ける。
「触ってない水って、なんでこんなに“もう触った”感じするんだろうな」 「順番が逆だから」 「何の」 「手のほうの」 「今日いちばん意味分かんない」 「いまのは鳴らない」 「鳴るときある」
少し遅れて、音。 どちらの耳か分からない。二人とも笑わない。笑わないで、同時に水面から目を離す。離し方まで少し似ていて、それが少し気持ち悪い。